IL-2受容体γ鎖変異による伴性重症複合免疫不全症の発症機構に関する研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06404025
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 菅村 和夫 東北大学, 医学部, 教授 (20117360)
• 研究分担者: 笠井 憲雪 東北大学, 医学部, 教授 (60001947) ; 今野 多助 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (00004846) ; 浅尾 裕信 東北大学, 医学部, 助手 (80250744)
• キーワード: インターロイキン2 (IL-2) / IL-2受容体 / サイイトカイン / XSCID / T細胞分化増殖 / チロシンキナーゼ

研究概要

ヒトX連鎖重症複合免疫不全症(XSCID)はインターロイキン2(IL-2)受容体γ鎖遺伝子の変異にに伴うT細胞初期分化過程の障害が原因である。このXSCID発症機構を詳細に解析するために、γ鎖を共通受容体とするサイトカイン受容体からの細胞内シグナル伝達機構について解析した。その結果、γ鎖に会合するJak3チロシンキナーゼを介するシグナル伝達に関わる新規機能分子″STAM″の遺伝子単離を行った。STAMは分子内に機能的に重要と考えられるSH3ドメインとITAM領域を有していた。STAMはIL-2のみならずIL-4、IL-7、 GM-CSF、 IL-3、 PDGF、 EGF等の刺激によってもリン酸を受け、これら種々のサイトカインによる細胞内シグナル伝達に関わっている可能性が示唆された。また、STAMがJak3、Jac2と直接会合し、これらキナーゼの基質であることも示唆された。STAMのSH3領域欠損変異体を過剰に発現されたところ、IL-2及びGM-CSF刺激によるDNA合成が阻害された。さらに、c-mycとSTAMの関連を調べたところ、STAMを過剰発現させるとc-mycの発現が増強された。以上の結果から、STAMがJak3、 Jac2の下流において細胞増殖やc-myc誘導シグナル伝達に関わる機能分子であることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] 竹下 敏一: "A new type of signal transducing adaptor molecule, STAM : Association with Janus kinases and involvement in cell growth and c-myc induction mediated by cytokines." Immunity. (印刷中).
• [文献書誌] 田中 伸幸: "Essential requirement of Itk, a T cell specific tyrosine kinase in CD2-mediated IL-2 promoter activation in human T cell line Jurkat." Eur. J. Immunol. (印刷中).
• [文献書誌] 竹下 敏一: "Cloning a novel signal transducing adaptor molecule STAM : containing an SH3 and ITAM." Bioch. Biophys. Res. Comm.225. 1035-1039 (1996)
• [文献書誌] 樋口 雅也: "Dispensability of Jakl tyrosine kinase for interleukin-2-induced cell growth signaling in a human T cell line" Eur. J. Immunol.26. 1322-1327 (1996)
• [文献書誌] 斉藤 滋: "Expression of the interleukin-2-receptor (IL-2R)γ chain on cord blood mononuclear cells." Blood. 87. 3344-3350 (1996)
• [文献書誌] 菅村 和夫: "The interleukin 2 receptor γ chain : its role in the multiple cytokine receptor complexes and T cell development in XSCID." Annu. Rev. Immunol.14. 179-205 (1996)
• [文献書誌] 大保 和之: "Modulation of hematopoiesis in mouse with a trucated mutant of the interleukin-2 receptor γ chain." Blood. 87. 965-967 (1996)