研究概要 |
ヒトの脊髄小脳変性症において,なぜ特定の神経細胞群が変性するか,さらにその治療法を確立していく基盤を築くために,遺伝性脊髄小脳変性症の中で,我々がその原因遺伝子を発見した歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubral-pallidoluysian atrophy,以下DRPLA)について,ヒトの歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症に相当する動物モデルの作製を試みた.まずヒト,マウスについて全長のDRPLA cDNA,ヒト,マウスのDRPLAゲノムDNAのクローン化を行いその構造を明らかにした.DRPLA遺伝子が,中枢神経系だけでなく体臓器においても発現が広く認められること,また,中枢神経系では著しい体細胞モザイクが存在し,神経細胞においてCAGリピートが短いということを発見した.動物モデルの作製については,78リピートのCAGリピートを有する変異ゲノムDNAをDRPLA症例からクローン化し,胚性幹細胞に導入して単一コピーを有する胚性幹細胞を得,現在キメラマウスの作製まで完了している.germline transmissionによりヒト変異DRPLA遺伝子を1コピー有するマウスの作製が近く完了する予定である.cDNAについても78リピートのCAGリピートを有する全長の変異DRPLA cDNAを作製し,これを用いてトランスジェニックマウスの作製を行った.現在までにヒト変異DRPLA cDNAを有する複数のトランスジェニックマウスが作製に完了しており,現在その表現型を慎重に経過観察している段階にある.以上,この2年間において,変異DRPLAゲノムDNAおよび変異DRPLA cDNAを有するトランスジェニックマウスの作製はほぼ達成することができた,これらのトランスジェニックマウスを用いて,その表現型,病理学的変化,遺伝子発現の異常の詳細,タンパクレベルでの発現異常などについて詳細な解析を行う必要がある.
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