研究概要 |
昨年度に引き続きATL細胞の増殖機構に関する研究を行い本年度は以下の成果を得た。1. SCIDマウスを用い、1例のATLより継代可能なin vivo増殖モデルを樹立した。この系においても、ATL細胞のin vivo増殖には、HTLV-I発現が必要でないこと、および、古典的なIL-2オートクリンの機構は働いていないことを示した。また、このモデルでは、マウス血清中PTHrP, Ca高値が認められ、ATLにおける高Ca血症研究に有用である。2. ATL細胞と臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)との細胞接着に関与すると思われた未知の接着経路を阻止可能な2種のモノクロナル抗体を作製し、その認識する抗原の性状を明らかにするとともに、発現クローニング法によりそのcDNAクローニングに成功した。 その結果、この抗原はTNF受容体ファミリーに属するOX40であることが判明した。さらに、OX40とそのリガンドであるgp34 cDNAの安定発現細胞を作製して、従来は、T, B細胞相互作用に関与すると報告されていたOX40/gp34は、細胞接着にも関与していることを初めて証明した。また、gp34は、HUVEC以外の大動脈や皮膚細小血管内皮細胞にも発現していることを明らかにし、OX40/gp34は、ATL細胞のin vivoでの増殖、臓器浸潤に関与しているのみならず、活性化T細胞と血管内皮細胞との接着にも関与し、種々の炎症病変形成にとっても重要であると考えられた。
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