研究概要 |
1.Fibrinogen(Fbg)遺伝性異常分子の解析:科研費補助金を受けて従来より継続して来ていたものを本研究で更に発展させることができた.その1つにドイツで発見されたFbg Marburg Iがある.本分子異常は臨床的に出血,血栓症,創傷治癒不全とFbgが関与する3つの症状を呈している所から,分子レベルで得られる情報のもつ意義は大きい.遺伝子解析から本異常分子はAα鎖C末150残基を欠失するホモ接合体と判明しているが,その精製は困難な為,ドイツから精製と分析を依頼されたものである.我々はCa^<2+>依存性抗Fbgモノクロナル抗体の作製に成功し,これを応用する親和性クロマトグラフィーにより異常Fbgを高収率で精製することが出来た(Thromb.Haemostas.,印刷中).精製異常分子の約30%は遊離SH基をもつAα Cys442が血漿中のalbumin(Alb)とS‐S結合し,このAlbが活性型VIII因子(VIIIa)の基質となって他のFbg分子に架橋することが判明した.血漿AlbがVIIIaによってfibrin(Fbn)に架橋結合することはこれまでに報告を見ない新知見である.本異常分子は,Fbnへの転換が遅い為出血傾向を招来し,架橋Albを介して線溶酵素plasminに抵抗して血栓症に関連し,AαC末領域の接着蛋白活性中心となるRGD配列を失なって創傷治癒不全に結びつくと考えられ,重要な知見と考えられる.内外の学会報告を終え,論文化を進めている.これとは別にFbg Kurashiki I(γGly 268→Glu)およびKamogawa(γArg275→Ser)で新しい変異型を遺伝子・分子レベルで同定したので,論文を作成中である. 2.細胞接着に関する研究:ヒト・グリオーマ由来の培養細胞を用い,種々の接着分子上で培養した際のfibronectin(FN)とvitronectin(VN)およびこれらのレセプター(FNR,VNR)の発現と分布・局在を検討した.その結果,培養の経過と共にこれらの分子は接着分子の存在に呼応して発現と分布の様相を変化させ,細胞の接着と伸展および形態の変化や維持を司どっていることが判明したので報告した(Brain Res.,659:23‐32,1994).
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