研究概要 |
1.遺伝性異常フィブリノゲン(以下Gbg)の構造解析:これまでに報告のない新変異2型が同定され,Fbgの構造-機能関係に新知見が得られた.Fbg Kurashiki Iのγ268 Gly→Glu (Blood印刷中), Kamogawaのγ275 Arg→Ser(投稿準備中)で,共に最近提唱されているD : D self-association sitesの機能障害に結びつくことが判明した.この反応部位の障害は代表者が1983年に報告したFbg Tokyo IIで初めて見出され,海外の共同研究者により報告されたものである(J. Clin. Invest.に掲載).別の異常分子FbgKumamotoではAα19 Arg→Glyが同定された.本異常分子はフィブリン(以下Fbn)へのトロンビン吸着が障害されていることから血栓症に結びついており,血栓形成の自己制御機能に関する貴重な情報と思われる(投稿準備中).これらの他,国内外から依頼された8家系(旭川II,倉敷II,盛岡II,新潟II,名古屋II, Gerris, Guarenas,Marburg I)の解析を続けて来ている. 2.抗Fbgモノクローナル抗体(mAb)の作成と応用: Fbgの特異構造を認識する3種類のmAbの解析を終了し,その応用を検討した.(1)Dドメインのカルシウム依存性構造を認識するmAbが得られ,これを担体として親和性クロマトグラフィーによるFbg精製に応用してその有用性を確認した(Thromb. Haemostas.に掲載).(2)活性型XIII因子による架橋形成とFbn重合とを特異的に阻害するユニークなmAbが得られ,これらの反応の分子機作解明に利用している(日本血栓止血誌に投稿中).(3)Fbg→Fbn転換に伴なって生ずるEドメインの特異構造を認識するmAbが得られ,可溶性Fbnの形成機序の分析と血栓症の診断に応用し得ることが判明した(Bloodに印刷中)
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