研究課題/領域番号 |
06404055
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
下地 恒毅 新潟大学, 医学部, 教授 (30040158)
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研究分担者 |
森 寿 東京大学, 医学部, 助手 (00239617)
藤原 直士 新潟大学, 医学部附属病院, 講師 (70181419)
熊西 敏郎 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40018601)
福田 悟 新潟大学, 医学部, 助教授 (30116751)
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キーワード | 抗脳虚血機構 / NMDA受容体 / MK-801 / ハロヘリドール / サブユニット / 虚血性神経細胞壊死 |
研究概要 |
グルタミン酸受容体は虚血性神経細胞死に関与することが示唆されていることから、虚血に対する神経細胞保護効果が示唆される薬物であるMK-801(dizocilpine)やハロペリドールがグルタミン酸受容体のサブタイプであるNMDA受容体チャネルに対してどのように作用するかを、分子生物学的手法により検索し、MK-801やハロペリドールの抗虚血作用の機序を検討した。NMDA受容体チャネルでは、4種類のサブユニット(ε1,ε2,ε3,ε4)がチャネルの機能的性質を決定しており、ε1とε2サブユニットは、マグネシウムによる閉塞阻害に対して感受性が高く、プロテインキナーゼの活性化剤により活性増強を受けることから、シナプス可塑性に関与していると考えられている。一方、ε3とε4サブユニットはマグネシウムによる閉塞阻害に対して感受性が低く、プロテインキナーゼの活性化剤により活性増強を受けないことから、シナプス伝達に関与すると考えられている。NMDA受容体チャネルの非競合的阻害剤であり、虚血による神経細胞死に対する抑制効果の認められているMK-801は、ε1とε2サブユニットから構成されるチャネルをε3とε4サブユニットから構成されるチャネルよりも強く抑制した。このことは、虚血性細胞壊死に関与するサブユニットは、シナプス可塑性への関与が示唆されるε1とε2サブユニットである可能性を示唆する。一方、ハロペリドールは数マイクロモル濃度にて抗虚血作用を有することが報告されているが、マイクロモル濃度では、NMDA受容体チャネルのε2サブユニットから構成されるチャネルのみを選択的に抑制した。したがって、ハロペリドールの抗虚血作用にはε2サブユニットから構成されるNMDA受容体チャネルの抑制が関与していることが示唆された。以上、MK-801とハロペリドールの抗虚血機序に関与するサブユニットの検索結果や、ε2サブユニットが前脳の特に虚血に対して脆弱な海馬にその発現が多いことから、虚血性神経細胞壊死の発症機序にはNMDA受容体チャネルの中でも、特異的なサブユニットの関与が重要であることが示唆された。
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