研究概要 |
色素性乾皮症A群遺伝子(XPA遺伝子)を大腸菌内で発現させ、XPA蛋白を精製し、それが紫外線、シスプラチン、四酸化オスミウム等の障害を受けたDNAに特異的に結合する事を見いだした。そして、そのDNA結合ドメインがC4タイプZnフィンガーモチーフを含む122個のアミノ酸部分に存在し、N末端のEクラスター領域やC末端領域はDNA結合に関与しない事を明かにした。これらの2つのドメインはヌクレオチド除去修復過程において修復蛋白質の相互作用に関わると考え、酵母のtwo hybrid systemを用いてXPA蛋白質と結合する蛋白質を探索した。その結果、ERCC1蛋白質、RPA(replication protein A)がXPAに結合する事を見いだし、さらに2つの未知の蛋白質がXPA蛋白質に結合する事も見いだした。 一方、XPA遺伝子をノックアウトしたマウス(XPAマウス)を用いて、紫外線による皮膚発癌実験を行なった。マウスの背中を剃毛し、紫外線(UVB)をそれぞれ1000J/m2,2000J/m2,4000J/m2週3回照射した。正常マウスにはこれらの紫外線量では何の変化も認められなかったが、XPAマウスでは、2000J/m2,4000J/m2の紫外線照射1週間後に皮膚潰瘍が形成され、紫外線に高感受性である事が示された。4000J/m2の紫外線量では12週、2000J/m2では24週より急速に増大する腫瘍がXPAマウスに出現し、病理学的に有棘細胞癌と診断され、ヌードマウスに移植するとこれらは腫瘤を形成した。以上のデータより、XPAマウスは紫外線照射により皮膚発癌が非常に高頻度に起こる事が示唆され、A群XP患者における日光誘発皮膚癌の発症機構を探るよいモデルになる事が示唆された。
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