研究概要 |
Rasは互いに一次構造上相同性の見られない多くの因子と相互作用し,活性化するそこで,それらのターゲット認識・活性化機構の間にどのような共通性や特異性があるのかについて解析を行った.Ras結合時のRaf-1およびRGL(RalGDS Like)のRas結合ドメイン(RBD),さらに,Raf-1 RBDおよびRGL RBD結合時のRasについて,NMR法による立体構造解析を行った.その結果,両ドメインは,立体構造的な「共通フレームワーク」をもっているが,少しづつ異なった認識を行っていることが明らかとなった.このことは,RasおよびRGLの変異体を用いた解析からも示された.さらに,Rasの31番の残基の変異体を用いた解析から,31番の残基がLysのときのみRaf-1のCys-richドメイン(CRD)と異常に強い結合を示し,この性質がRaf-1の活性化を阻害すると考えられた. RasのGDP/GTP交換因子であるSosのPHドメインの構造を多次元NMR法により決定し,さらに,そのイノシトール3リン酸の結合部位を同定した.また,SosのGDP/GTP交換促進活性をもつ最小の領域を決定し,その領域のみを含む断片を細胞内で発現させるとそれのみで膜へと移行し,Rasを活性化することを見いだした.さらに,SosのDHドメインが刺激のない細胞内において,自分自身のRas活性化能を阻害することを明らかにした.
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