研究概要 |
細胞性粘菌のミオシン重鎖遺伝子を用い、遺伝子操作により最小モータードメインを作成した。この最小モータードメインは、ミオシン重鎖760残基のみから構成されているにもかかわらず、ATPase活性、F-アクチンの滑り運動、力の発生というミオシン分子のモーター機能の全てを保持していた。この最小モータードメインをMgADP/BeFx,MgADP/AlFx,MgADP/vanadate存在下で結晶化したところ、高分解能の構造解析が可能な良質の結晶が得られた。この結晶について、米国ウイスコンシン大学のRayment研と共同でX線結晶構造解析をおこない、細胞性粘菌ミオシンの最小モータードメインの構造を2Å分解能でといた。この結果、ミオシンATPase部位のアミノ酸残基と結合したヌクレオチドの間の水素結合の様子が明らかとなった。また、MgADP/BeFxを結合したミオシンモータードメインと,MgADP/AlFxあるいはMgADP/vanadateを結合したモータードメインの間に、大きな構造変化が生じることもあきらかになり、ミオシンモーターの作動の様子を原子構造レベルで見る可能性がでてきた。こうした、結晶構造をもとに、遺伝子操作によりさまざまな点変異を導入し、その構造と機能に与える影響を、分子計測法などをもちいて検討した。
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