研究概要 |
家族性心筋肥大症はミオシン病で、心筋ミオシン重鎖に点変異がはいっている。この変異ミオシンがどのような機能不全をおこしているかを、分子レベルであきらかにする目的で、細胞性粘菌ミオシンに家族性心筋肥大症の変異と同じ変異を導入した。こうして作った組換えミオシンのモーター活性を調べたといころ、症状の重い心筋肥大症に対応する変異は重度の機能不全を分子レベルでおこしていることがあきらかとなった。こうした変異は重鎖と軽鎖の接点に存在しており、以上の結果は重鎖と軽鎖のきちっとした結合がモーター活性に必須であることを示唆している。キネシンとミオシンの間には1次構造レベルでホモロジーはないが、キネシンモータードメインはミオシンモータードメインの一部とほとんど同じ構造をとっている。さらに、両者に共通の構造はRas蛋白質ともよく似ていることが明らかとなった。Ras蛋白質とミオシンモータードメインを比較すると、Ras蛋白質の機能に必須なスイッチ領域I,IIに相当する構造をミオシン上でも同定できる。これらミオシンのスイッチ領域のアミノ酸残基レベルでもRas蛋白質と相同性が高い。我々は、アラニンスキャニング変異導入法でミオシンのスイッチ領域のアミノ酸残基を変えてみた結果、これらの残基がミオシンでもRas蛋白質の場合と似たような機能を果たしていることをあきらかにした。
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