細胞性粘菌ミオシン重鎖遺伝子を用いて、さまざまな変異タンパク質を作成した。まず、ミオシン頭部の軽鎖結合ドメインを欠損させた、重鎖760残基からなる最小モータードメインを作成し、これがミオシンモーターの基本的機能を保持していることを確認した。この最小モーター・ドメインを結晶化し、米国のグループとの共同実験でX線結晶解析をおこない、結晶構造を明らかにした。この結晶構造に基づき、ミオシンモータードメインの重要な機能を担うアミノ酸残基を同定するため、アラニンスキャン変異導入をおこなった。この結果、ミオシンATPase部位スイッチI、スイッチというループ構造がγリン酸基に結合し、ATPの結合、加水分解に重要な役割をを果たしていることが明らかとなった。とくにスイッチというループ構造は、GTP結合タンパク質のスイッチ領域と大変よく似た構造機能を示し、GTP結合タンパク質とミオシンATPaseのあいだに進化的な関係があることが示された。また、結晶構造解析からは、ミオシンモータードメインはふたつの大きく異なる構造をとることが示されたが、実際には、こうした構造変化がATPの加水分解に伴って進行することが、クラゲの発光タンパク質とミオシンとの融合タンパク質を遺伝子操作で作成することで示された。現在、この構造変化がミオシンの力発生に関わっているという証拠が集まりつつある。
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