研究概要 |
シナプス形成過程を遺伝子がいかに制御しているかを解明するためにショウジョウバエを用いて研究を始めた。本年度は以下の二つの方向において進展がみられた。 (1)正常な神経筋シナプス形成過程の記述。ハエ幼生におけるシナプス形成過程は現時点ではあまり知られていないために、まず形態学的電気生理学的手法を用いて記述を行った。機能的シナプス伝達の開始,グルタミン酸受容体の集積,チャネルの性質等を詳しく研究した。また、受容体の筋表面における分布を可視化するために抗体を作成した。共焦点顕微鏡を用いて幼生における受容体の分布を検索中である。 (2)シナプス形成過程に関与する遺伝子の同定。上記形態学的電気生理学的解析と平行して、突然変異体の作成を行っている。神経筋シナプスの形成過程に関与する遺伝子に重大な異常がある場合、幼生は卵からでることができずに致死になるであろう。したがって、トランスポゾン,P因子を挿入してできた変異株のうち幼生致死株を約200株選んだ。そのうちP因子に組み込まれたマーカーが筋または運動神経細胞にあるものを選ぶと、17の株があった。このうち実際に神経筋シナプス伝達に異常のあるものを選ぶために現在生理学的な検索を行っている。
|