本年度の実験計画にのっとって以下の結果が得られた。 1) グルタミン酸受容体チャネルの解析 我々はシナプス外膜にあるグルタミン酸受容体チャネルのキネテイクス、イオン透過性に関して詳しく記述した。またシナプス後膜にあるチャネルは異なることも示した。しかしシナプス後膜はパッチ電極を外からあてることができないためにそれ以上の解析が困難であった。そこで今回は雑音分析法を用いてシナプス型チャネルのキネテイクスを調べた。ホールセルモードで電圧固定をしておき、シナプス部に100μMグルタミン酸を投与するとチャネルの開閉による雑音が生ずる。これをフーリエ解析するとチャネルの平均開口時間がわかる。この解析の結果二つの開口時間、約5msと20msがあることが分かった。前者はシナプス型で後者はシナプス外型チャネルによると思われる。シナプス外膜に同じようにグルタミン酸を投与すると20msのみの雑音が見られた。シナプス電流の下降期の時定数が約5msであることとも良くあっている。 2) 変異株MY7919の解析 変異遺伝子がクローンされ、その塩基配列にもとずいてポリペプチドが合成された。現在抗体を作る作業を行っている。 3) シナプス前終末膨大部におけるイオン電流の解析 筋細胞を投与してシナプスboutonsを分離し、パッチクランプ法を適用して、各種電流を記録した。Ba^<2+>存在下で持続時間の長い活動電位が記録され、Cd^<2+>で阻害された。したがってこれはCa^<2+>チャネルをBa^<2+>が通っておこった活動電位と考えられる。さらにこのように分離したboutonsで伝達物質の分泌がおこっているかどうかを調べるために蛍光色素FM1-43をとり込ませ神経を刺激してその放出を調べたところ、放出が確かめられた。このことから、この標本はシナプス前部でおこる出来事を調べるのに適していることが分った。
|