研究課題/領域番号 |
06404088
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研究種目 |
一般研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤正 巌 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (30010028)
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研究分担者 |
鎮西 恒雄 東京大学, 医学部, 助手 (20197643)
井街 宏 東京大学, 医学部, 教授 (10010076)
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キーワード | 統一理論の構成 / ランジュバン方程式 / 粘性抵抗 / 慣性抵抗 / 熱ゆらぎ / 非対称な歯 / エネルギーの単位 / 動き易い条件 |
研究概要 |
本年度は、将来開発されるべき人工筋肉素子の統一理論の構成、試験モデルとしての人工筋肉素子の基本的作製法について研究した。理論面では、ランジュバン方程式を拡張・分子運動論的に変形し、人工筋肉素子の水中での挙動を解析した。この領域(マイクロ・サブマイクロ)で、従来より多用されているスケール解析・次元解析の手法を用いず、基本方程式から直接的に粘性抵抗・慣性抵抗・ゆらぎ等の値を具体的に計算する方法を提示した。これより、次の事が示された。(1)媒質分子の熱運動に対抗し、仕事をするマイクロアクチュエータは、理論的に可能である。(2)我々の提案した人工筋肉素子の非対称な歯は、外部からエネルギーを、十分な効率で伝達しうる。(3)アクチュエータの寸法に対応するエネルギーの単位が存在する。(4)アクチュエータの動作を可能な限り素過程に分割し、それぞれの過程に見合ったエネルギー単位を決定する。(5)アクチュエータの寸法が、さらに微小化しても、入力エネルギーを増大させれば、水分子の熱運動に抗して駆動可能である。しかし、この場合、エネルギー効率は、指数的に悪化する。(6)水分子の熱に対抗するためには、基本単位組織の集積は重要な要素であることが、理論的に示された。また、この時の集積度をウサギの筋肉と顕微鏡下で比較し、生物学的に熱揺らぎに対する集積性の意味を考察した。実験面では、"動き易い"条件を満たす人工筋肉素子の望ましい形態に関する考察を行った。(7)フォトリングラフィーの技術とエツチングの手法を用いることで、1つの歯の寸法が400μmまでの縮小が可能となった。しかし、この寸法は、湿性エッチング技術の限度であり、新たな工夫が求められる。(8)固定部分と可動部分の歯の寸法関係について、考察した。可動部分の非安定性が、"動き易い"条件として求められることを示した。(9)生体内での動作条件を考察するために、血液・ガス分析装置を用いてウサギの体液・水溶液の濃度を変数として、動作環境を予備調査した。この結果、溶液の構造が、素子の安定性・運動特性に大きな影響を与える事が予想された。
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