研究概要 |
ここで研究された、新しい作動原理に基づいたマイクロアクチュエータは、集積可能な、横紋筋の基本作動単位であるサルコメアに類似の構造をした基本素子である.その素子は、その存在する場の力学的なエネルギーを利用して、仕事と力を発生する.場からのエネルギーの獲得には、アクチュエータの力学的構造の非対称性を利用する.本研究は、このような素子を生物に拠らない材料によって作り、それを集積化することを前提に、基本的な作動原理の推定、マクロな系での実証実験、実証実験から得られた経験により数理的に設計の条件を算出行うことを目的とした.研究の第一ステップでは、そのようなメソスコピックに及ぶ場の力学解析の理論の開発をまず行い、その理論に基づいて、新しいマイクロアクチュエータの存在する可能性を追求した.その結果、リニアモータの形状をした構造が考えられ、場のエネルギー獲得装置としてミオシン分子鎖に相当する非対称形状の歯を作り、その歯と、アクチン線維を模倣した球状の移動体の鎖の間に生ずる衝撃を、一方向に集めるようなモデルを設計した.このモデルを加工成形し、製作された人工サルコメアモデルの、動的な機能を計測した.この際、実時間での動作をその場観測するために,レーザーピンセットを使用した.理論上では、設計の基本条件を設定し、さらなる理論的考察をするために、ブラウン運動の分析の方程式であるランジュバン方程式を用いた.平面型集積サルコメアの基本素子一個の寸法を、数ミクロンになる程度まで精度を上げ、加工する手法を調査研究した.ランダムな振動の場を、外部からの超音波振動などとして非接触的に作り、集積した人工サルコメア集積体をその場に入れ、動作解析を行った.このようにして試作と理論的予測を繰り返し、実時間の計測装置を以てその動特性を分析し、材質や形状の寸法により、収縮を起こす最適の設計条件を検討した.
|