研究概要 |
1.ヤツメウナギ網膜細胞に対する単クローン抗体の作製 10種類の単クローン抗体が作製され、光顕、電顕免疫組織化学およびwestern blotの所見にもとづき、以下のような部位に陽性反応を示した。 1)W26,W27,W39:短光受容細胞(SPC)外節 2)W226,W231,W312,W425:SPCの外節、エリプソイドを除く内節、核周部および軸索 3)W15:SPC外節および内節 4)W38:SPC全領域 5)W318:網膜神経層 とくに、抗原物質が特定された単クローン抗体は、3種類であった。 1)W39:分子量約40kDaのヤツメウナギロドプシン 2)W312、W425:分子量約49kDaのヤツメウナギアレスチン 2.透過電顕による免疫反応の定量法の確立 免疫電顕の網膜試料は、通常作製される電顕試料とは異なり、4%パラフォルムアルデヒド-0.05%グルタールアルデヒドで固定し、親水性のLR-white樹脂に包埋した。反応用切片を観察すると、網膜神経層に多くの神経繊維の脱落が見られ、また円板膜が波打ち、大きく穴が開いたような状態が観察された。これは、この包埋法で脂質固定等に重要な四酸化オスミウムを使用できなかったことによるものと考えられた。しかし、光受容細胞では、作製された抗体との反応が金コロイド粒子としてよく観察された。この領域での免疫反応の定量は可能であった。今後、免疫反応性をもとに固定法と包埋法の検討が必要である。 結論 ヤツメウナギ網膜細胞を抗原とした単クローン抗体は、細胞を構成する多くの蛋白質、糖鎖、脂質などを認識する。これらの抗体を、細胞進化のプローブとして利用することにより、網膜の「細胞系統樹」を描く方法論が開かれた。
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