研究概要 |
1.この種の研究では適切な試料の入手が研究の成否を左右する。今年度中に、これまで欠けていたスナメリ、オットセイなどの海産哺乳類、カツオドリ、カワウなど鳥類試料が各地から入手できた。 2.淡水産バイカルアザラシでは成獣の年齢にともなうCdの濃縮が雌で上昇、雄で低下するという海産哺乳類では全く認められていない特異的現象を発見した。この現象はバイカル湖の低Hg,Cd環境と餌生物の特性から説明できた。その他、Cu,Fe,Mnなども特異的蓄積が認められた。 3.ICP-MS分析により、多数動物試料について多数の重金属元素蓄積の情報が集積されつつある。なかでも海産哺乳類で肝中にAgの特異的集積があること、組織内の相対濃度からみて脳中Ag濃度が高いことは注目される。またタイマイの甲羅を用いたICP-MS分析による元素間濃度と元素間濃度比が原産地判別に利用可能なことがわかった。 4標識鳥を用いてカツオドリの重金属蓄積の年齢と換羽の影響を明らかにした(普通、野鳥の年齢判定は難しい。)幼鳥期までは組織器官による重金属濃度は必須元素といえども激しく変動する。巣立ち後、加齢による変動は緩やかとなる。しかしHgは換羽により排泄されるため、その様式や季節により体内濃度が左右され加齢による明らかな上昇は認められない。 5ウミガメ類におけるメタロチオネインの存在とそれにともなう重金属蓄積の変動について検討中である。 6本研究は平成6・7年度の2ヶ年計画であり、本年度はその中間報告と位置づけている。初年度であり成果も講演発表が中心である。
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