著作者、書名、発行主体、発行年次など基礎的な書誌事項が明瞭で、冊子体で保管も容易な図書に関しては早くから検索ツールが整備され、データベースの構築も進んでいる。 これに対し、文書館・資料館が所蔵する非定型資料、たとえばビラ、ポスター、バッジや旗などについては、その検索手段の制作は容易ではなかった。資料1点1点について、専門のアーキビストがその内容を記述するという、きわめて時間のかかる作業が要求されたからである。しかも、形式内容ともに多様な資料について言葉で記述することでは、その内容を十全に表現しえないという難点がある。一部の資料、たとえばポスターなどは言語記述の代わりに写真を用いることも出来るが、コストがかかり、その割に検索ツールとしては役に立たないという問題をもっている。 ところが、近年の情報技術の進歩は、画像情報や音声情報をデジタル化し、大容量記憶装置に保存し、これを基礎にデータベースを構築することが可能となりつつある。 本研究は、こうした異種資料の検索ツールとしてのマルチメディア・データベースを構築することを目的として開始されたものであった。研究期間中に、インターネットを介してのデータベース利用の可能性が広がったことで、単に検索ツールとしてだけでなく、世界中から閲覧可能な電子資料館の構築を展望できるところまで到達している。現在はまだ初歩的段階であるが、本研究の成果は、法政大学大原社会問題研究所のサイト(http://oisr.org)のデジタル・ライブラリー(http://oisr.org/dglb/)に生かされているので、参照されたい。
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