生命倫理・環境倫理・情報倫理等の諸課題の分析に基づく実用倫理学の体系化の試み

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06451008
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 飯田 亘之 千葉大学, 文学部, 教授 (90009663)
• 研究分担者: 高橋 久一郎 京都大学文学部, 助教授 (60197134) ; 忽那 敬三 京都大学文学部, 助教授 (70192028) ; 土屋 俊 京都大学文学部, 教授 (50155404) ; 加藤 尚武 京都大学文学部, 教授 (10011305) ; 藤村 眞示 千葉大学, 医学部, 教授 (80143270)
• キーワード: 生命倫理 / 環境倫理 / 情報倫理 / 応用倫理学 / 実用倫理学

研究概要

本研究は、最近日本でも研究教育の対象となった応用倫理学あるいは実用倫理学各分野相互の関係及び古典的倫理学に対するそれぞれの位置を明らかにし、倫理学一般との関わりの中でその全体像を体系的にとらえようとするものであり、この課題に答えるために、まず、海外の主要文献を多量に収集、分類、整理し、その中で最も大切なものを解読、検討し、それらをふまえつつ相互に検討、意見を交換し研究をすすめている。
生命倫理に関しては、特にDNAマッピングに焦点をあて、これがもたらす現代的意味、即ちプライバシーを一つの軸として機能している社会的取り決めを根底から揺さぶる個人情報の他者による完全な掌握の可能性と秘密保持の問題、新たに生じる差別、人間の改造の問題等を検討している。また、環境倫理に関してはホ-リズムや、B.ノートンの非個人主義の主張にある新たな倫理学の枠組みの提唱に注目し、それらの倫理学上の意味を検討している。また、動物の権利論の人間中心主義批判にも、倫理学上重要な意味があると見てその思想史上の意義を検討している。情報倫理に関しては、前記医療倫理との関係で問題になる医療情報の秘密保持、及び情報社会で特に問題となる知的所有権の問題を検討している。
我々の研究は、従来の人間観、倫理思想に対する様々な問いかけを、倫理思想一般との関わりの中で体系的に受けとめ直し、この新たな分野を思想界の中に正しく位置づけ、大学教育はもとより、中高等学校の生命、環境教育等に対して新たな見取り図を作るべく作業を続行中である。

研究成果

• [文献書誌] 飯田 亘之: "T.レ-ガンとB.ノートン" 生命環境・科学技術倫理研究資料集II. 354-357 (1995)
• [文献書誌] 藤村 眞示: "遺伝子操作・遺伝子治療" 生命・環境・科学技術倫理研究資料集II. 176-181 (1995)
• [文献書誌] 土屋 俊: "情報通信論へのコンピュータエシックスからのアプローチ" 電子情報通信学会第三種研究会情報通信倫理研究専門委員会報告書. (1995)
• [文献書誌] 忽那 敬三: "廣松哲学の原初的風景" 情況. 第2期5巻10号. 95-104 (1994)
• [文献書誌] 高橋 久一郎: "遺伝子「治療」が問題なのではない-遺伝子「治療」と受精・胚「実験」そして情報「管理」-" 生命・環境・科学技術倫理研究資料集II. 215-223 (1995)
• [文献書誌] 高橋 久一郎: "「環境倫理学」は必要か?" 創文. 362. 6-9 (1995)
• [文献書誌] 高橋 久一郎: "環境倫理学は可能か?Part1〈環境経済学〉〈環境科学〉「批判」のために" 生命・環境・科学技術倫理研究資料集II. 315-319 (1995)
• [文献書誌] 高橋 久一郎: "アリストテレスの理論的理性論(上)" 人文研究. 24号. 1-26 (1995)
• [文献書誌] 藤村眞示・高橋久一郎・忽那敬三・飯田亘之ほか編: "生命・環境・科学技術倫理研究資料集I" 千葉大学普遍科目「科学技術の発達と現代社会II」企画運営委員会, 167 (1995)
• [文献書誌] 藤村眞示・高橋久一郎・忽那敬三・飯田亘之ほか編: "生命・環境・科学技術倫理研究資料集II" 千葉大学普遍科目「科学技術の発達と現代社会II」企画運営委員会, 230 (1995)
• [文献書誌] 加藤 尚武: "応用倫理学のすすめ" 193 (1994)
• [文献書誌] M.E.ブラットマン 高橋 久一郎ほか訳: "意図と行為" 産業図書, 387 (1994)