研究課題/領域番号 |
06451009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 正英 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (90083708)
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研究分担者 |
竹内 整一 専修大学, 文学部, 教授 (80107515)
黒住 真 東京大学, 教養学部, 助教授 (00153411)
菅野 覚明 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (70186170)
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キーワード | 日本倫理思想史 / 非文字資料 / 景観 / 景物 / 原郷 / 風土論 |
研究概要 |
本研究は、文献資料には表面化しない、あるいはそこからは間接的にしか得ることのできない、より具体的な生に即した資料を対象とし、自覚的に捉え直された倫理思想の基底にある生の具体的な諸相を、倫理学体系の内に位置づけ、再構成することを目的とする。 上記目的に沿って、平成7年度は、(1)代表者及び分担者が、担当領域の個別研究を進め、(2)定期研究会において、資料の整理・方法論の検討・体系化の試みを行った。本年度は特に、和辻哲郎の風土論を始めとする近代の景観思想の諸概念を吟味し、そこから、日本倫理思想史における景観の把握を通時代的に概観することを試みた。ことに、柳田国男が早くから指摘していた「音」や「匂い」のある「風景」という概念に着目し、それを基礎づける資料の収集・整理を行い、非文字資料の水準における日本倫理思想史の実証的基盤の確立に務めた。その結果、言語化される以前の、生の基底的場面の一位相たる視知覚領野を自己・辺境(景物)・原郷の三つの方法概念によって「景観」として捉え直す倫理思想史的な景観論を提起し、古代の祭祀思想や中世の隠遁思想、近世の天の思想などを新たに捉え直す視座を確立した。また、人間存在の第一義的な現実態を「間柄」として捉える和辻倫理学の風土の視座を相対化し、「意識としての自己」から出発する新たな倫理学基礎論の枠組みをも示唆することができた。これらの一部は、東京大学文学部の分化交流懇談会の席上、研究代表者によって「景観の思想」の題目で発表された。
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