研究課題/領域番号 |
06451015
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岩崎 庸男 筑波大学, 心理学系, 教授 (70092509)
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研究分担者 |
原 美樹 (高砂 美樹) 山野美容芸術短期大学, 講師 (40261763)
一谷 幸男 筑波大学, 心理学系, 助教授 (80176289)
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キーワード | 6-hydroxydopamine / 新生仔期処置 / 脳内ドパミン / 多動 / 中枢興奮薬 / マイクロダイアリシス / 学習障害 / ラット |
研究概要 |
生後2・4日齢に両側脳室に6-hydroxydopamine(70ug)を投与することによって脳内ドパミン(DA)系を損傷したラットは、とくに性成熟に達するまでの発達期に、多動(過活動)と迷路学習障害を示すことを平成6年度に報告した。今年度は、これらのラットの報酬反応性が低下しているかどうかを検討するために、条件性場所選好課題(conditioned place preference:CPP)を用いて、中枢興奮薬であるmethamphetamine(MAP)とDA取り込み阻害薬であるnomifensine(NFS)に対する選好度を調べた。その結果、MAPとNFSに対する選好度は、DA系損傷ラットにおいても正常ラットとほぼ同程度に維持されていることがわかった。このことは、組織含量の面では脳内DA量の重篤な減少があるにもかかわらず、DA系損傷ラットのDA系の報酬反応性が正常であるということを示唆しており、逆説的な結果であるといえる。そこでこの点をさらに検討するために、ニューロン間隙におけるDA量をマイクロダイアリシス(脳内微小透析)法によって測定した。新生仔期6-hydroxydopamine投与によって最も顕著に(約10%にまで減少する)DA組織含量が減少する線条件においては、ニューロン間隙のDA量は8.88nMであり、これは正常ラット(25.3nM)の約35%であった。そして報酬反応性に深く係わっていると考えられる側坐核では、ニューロン間隙のDA量は7.44nMであり、これは正常ラット(3.33nM)の約223%であった。側坐核の組織含量は正常ラットの約35%であるから、DA系損傷ラットでは組織含量の減少を補償する何らかのメカニズムが形成されていることが示唆される。そしてこのことが、新生仔期6-hydroxydopamine投与ラットにおける行動面での報酬反応性が正常に維持されていることの背景となっていると考えられる。
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