研究課題/領域番号 |
06451016
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
齋藤 洋典 名古屋大学, 大学院・人間情報学研究科, 助教授 (40178504)
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研究分担者 |
川上 正浩 名古屋大学, 教育学部, 助手 (40242789)
三輪 和久 名古屋大学, 大学院・人間情報学研究科, 助教授 (90219832)
筧 一彦 名古屋大学, 大学院・人間情報学研究科, 教授 (90262930)
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キーワード | 漢字 / 読み / 心内辞書 / mental lexicon / migration / illusory conjunction |
研究概要 |
<刺激材料のデータベース化> 漢字1語の形態、音韻、出現頻度、読みの種類などの関連情報を、漢字1語とそれを構成する部首(部品)について、データベース化し、これによって材料選定をより厳密に行なうためのシステムを構築しつつある。作業の結果、現時点において以下のことが明らかになった。 1)左右分離漢字の比率:本研究で用いた分類方法によると、左右分離漢字と見なされる漢字は、JIS第一種に属する漢字2965字のうち、1668字であった。 2)部品数:左右分離漢字(1668字)を構成する部品の数は857種類であった。 3)部品の内訳:左右分離漢字の漢字構成上の左位置にのみ出現する部品は97種類、右のみに出現する部品は610種類、左右両方の位置に出現する部品は150種類であった。 4)漢字同定の容易さ:右位置に出現する部品のバリエーションが左位置に出現するものよりも多い。このことは、もし左右いずれか一方の部品の形態情報にのみ依存して、ターゲット漢字の推定を行なう実験事態においては、右位置に出現する部品の方が同定のための有効な手がかりとなることを示す。さらに、部品によって、当該部品を共有する漢字数が異なり、結果的にその部品を含む漢字の候補数の差異が算出される。 よってこの算出結果に基づいて、漢字の部品が認知された際の候補漢字の同定可能性を実験的に検討する道が開かれた。さらに、今後、それぞれの部品が持つ意味情報、音韻情報と、漢字全体の意味情報、音韻情報との関連性についての検討が望まれる。現在、漢字1語とそれを構成する部品(旁)との音韻情報の重なり(一致)の程度について集計を進めている。 <実験装置の構成> 漢字1字とその部分パターン(部首)を任意の位置に厳密に呈示するために高速呈示装置を必要としていたが、システムの構成とそのチューンアップについての技術的問題は、ほぼ解決された。現在、本装置による視覚刺激を用いた実験の遂行は可能になっているが、視覚と聴覚刺激との同時呈示による実験の遂行については、なお調整を必要としている。 <実験の実施> 上記の高速呈示システムの完成までに、現有の旧システムによって、予備実験を遂行した。実験はすべて個人実験で行ない、表記特性を考慮して以下の材料と要因(刺激呈示時間と刺激間間隔)について順次検討を加えた。実験パラダイムとしては、2種類の文字又は数字を先行呈示し、その後に1種類の文字又は数字をテストパターンとして呈示し、先行するパターンが呈示されたか否かの判断を被験者に求める課題を用いた。反応の指標としては正答率と反応時間を用いた。視覚的再認法による以下の3種類の材料によるletter migration実験を遂行した。 実験1.二桁の数字、2.ひらがな表記2文字(単語)、3.読みを制御した漢字、4.意味を制御した漢字。 実験結果については、なお分析中ではあるが、数字よりも、かなが、またかなよりも漢字が、高い結合錯誤率を示し、特に漢字1語に対する視覚処理の初期段階において、音韻処理の介入を示唆するデータを得た。
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