言語は音の組合せであるが、日本人は「かな」と「漢字」という表音文字と表意文字を使っているので、特有な脳の使い方をしているという考えがある。脳出血などで言語を失った患者のリハビリの際、「かの」より「漢字」が復活しやすいという症例報告がある。これは失語症において、損なわれるのは左脳であって、右脳ではないことに関係していることが推測される。本研究は「かな」と「漢字」言語処理の脳内機構を探るため、(1)閉眼静止してください。テレビ画面に映し出される文字を(2)黙読しない、(3)音読しなさいという課題を与えて、ポジトロン断層撮影を行ない、課題に特異的に働く部位の検討を行なうものである。 被験者は20-25歳の志願者。刺激材料はそれぞれ120個から成る(1)4文字熟語、(2)4文字ひらがな単語で、1.5sec間隔に100msec順次提示する。 仰臥した被験者に(1)、(2)の単語、熟語系列を提示、(1)、(2)、(3)の課題を与え、6回の実験を繰り返す。 結果は、核磁気共鳴画像に、(1)と(2)について、(3)マイナス(2)、(2)マイナス(1)をコンピュータ処理したポジトロン断層撮影結果を重ねて、「かな」と「漢字」処理に関わる脳部位を明らかにした。予備実験に手間どり、本実験は9月から始め、現在12名の志願者について実験を行なったが、結論を出すまでには至っていない。この研究経過は計画どおり進んでいると考えている。
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