言語は音の組合せであるが、日本人は「かな」と「漢字」という表音文字と表意文字を併用している。脳梗塞、脳出血などで言語を失った日本人のリハビリの過程において、「かな」より「漢字」の方が復活しやすいということが症例報告にしばしば記載されている。このことは日本人は他の言語を使う人たちと異なった脳の使い方をしていること、つまり、「かな」と「漢字」を処理する神経機構が異なっていることを推定させるものである。本研究はこの推定を確かめるためにポジトロン断層撮影法(PET)を用い、「かな」と「漢字」を提示したときの違いを明らかにすることを目的とするものである。 被験者は実験の意味をよく理解し被験者になることに同意した20-25才の学生志願者。 テレビ画面に映し出される四文字熟語、かな単語(1.5秒間隔で100ミリ秒を順次4分間提示)に対して、(1)黙読しなさい、(2)音読しなさい、(3)連想する単語を言いなさいという課題を与え、その結果から(3)-(2)、'(2)-(1)、(1)-閉眼静止した状態を引算することにより、(1)連想に関わる部位、(2)発声に関わる部位、(3)文字処理に関わる部位、(4)視覚情報の処理に関わる部位を検討した。 本年度は「自発運動をする課題」から「閉眼静止した状態」を引算することにより運動野を選択的に光らせることができ、われわれが行なった画像処理の妥当性を確認した。課題実験に関しては現在までに16名の被験者を用い実験を繰り返している。個体別の結果を得ているが、平均値を出す点に問題があり、未だ結論を出すまでには至っていない。この研究経過は計画どおり進んでいると考えている。
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