言語は音の組合せであるが、日本人は表音文字のカナと表意文字の漢字を併用して言語活動を行なっている。このことは日本人は他の外国人とは違った脳の使い方をしていることが想定される。純粋失語のリハビリでは漢字の方が回復しやすいことと、カナと漢字を失った場合、部位的にことなることが本邦文献で確認されている。本研究の目的はこのことを確かめるために行なわれたものである。 被験者をポジトロン断層撮影(PET)装置のベッドに仰臥させ、眼前のTV画面に4文字熟語とカナ単語を1.5sec間隔で、100msec間提示する。被験者はそれを黙読、音読することを教示される。課題は(1)仰臥閉眼静止する。(2)TV画面を凝視する。(3)提示された単語を音読する。(4)提示された単語を音読する。それぞれのPET画像を「遺伝的アルゴリズム」と呼ぶ、研究協力者の橋本の考案した引算法によって「発生」、「文字認知」、「視知覚」に関する脳部位を特定する。 12名の被験者について実験を繰り返した。 [結果]1.仰臥閉眼静止状態のPET像は被験者内、被験者間にバラツキが認められた。2.(2)のTV画面を凝視すると視覚野の局所血流量が特異的に有意に増加した。3.(3)文字認知については角回、Wernicke野を中心に局所血流量が増加した。4.発声にともない運動野に活性化されることが認められた。 以上の結果は先行の英語論文に一致するものであるが、漢字とカナの認知に特別な差認めなかったことについての解釈については後の他の研究者の結果を待たなければならない。
|