1.5カ月児と母親との家庭の日常の相互交渉場面での情緒的コミュニケーションのビデオ記録を乳児の表出するポジティブ・ネガティブ・ニュートラルのそれぞれの情緒に対して、母親がどんな情緒表出により応答するかという視点から分析するとともに表情・発声・身ぶりというモードを母親がどのくらい用いるかについても分析を行なってきた。全体で40対の母子についての60分の記録を分析しているが、本年度中にほぼ半数の資料の分析を終え、のこりを次年度に分析するが、これまでの分析から母親の情緒的応答が米国の母親とくらべ少なく、身体的接触が多いことが推測される。 2.11カ月児36名を対象として、喜び、悲しみ、嫌悪の3種の情緒を誘発させる実験を行った。分析は、下の手順でなされた。ビデオ再生機をコンピュータで制御しながら、1秒1コマのサンプリングにより画像をコンピュータに取りこんで処理した。画像処理した乳児の顔をレーザープリンターで出力させた。約4000枚の出力された表情の図版を用いて、3名の評定者が口の領域についてのソーティングを実施(EckmanのFACSにあるAUに依拠して)した。今後、眉と鼻の領域について同様の分析を進める予定で、それらが終わった後、11カ月児が実際にどのような表出のレパートリを有するのか、表出と情緒との間に特定の関係があるのか、あるいは個人間で表出と情緒との関係が特殊に発達しているのかを、クラスター分析や判別分析などを用いて明らかにしていくことを考えている。
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