1.5ヵ月の乳児と母親の家庭の日常場面における相互交渉を情緒的コミュニケーションの視点から分析検討した。とくに乳児のボジティブ・ネガティブ・ニュートラルのそれぞれの情緒表出に対する母親の情緒表出による応答を検討した。対象とは40組の母子で子どもの性別は男女それぞれ20名である。また第1子が20名、第2子が20名であった。分析は60分間の相互交渉を記録したビデオテープについてなされた。その結果以前われわれが行った米国の20組の母子を対象とした分析結果とくらべ母親の子どもに対しての応答に現れる情緒の種類が少ないこと、子どものネガティブ、ボジティブのそれぞれの情緒的表出に対する応答の比率が日本の母親のほうが少ないことがわかった。 2.11ヵ月の乳児41名を対象に怒り・恐れを誘発する〈腕の抑制〉、〈吠えるゴリラ〉という2種の状況を設定し反応を分析検討した。状況と反応には対応関係が認められたが、それは子どものネガティブな感情状態と何らかの対応があると思われる。これは口の形態を10種に分類することによって行われたが今後眉・鼻についての分析を行って精度を高めたい。 3.上の2.の乳児のうち21名について怒り・恐れ・驚きを誘発し情緒表出パタンの個人差を検討するとともに、同数の米国の乳児についての同じ実験で得られた結果と比較して文化差を検討した。かなり大きな個人差とともに文化差が見られた。母親面接の結果と対照させると先行経験が子どもの感情状態のコーピング行動に影響していることが推測され、この点に関して特に大きな文化差が見られた。
|