研究概要 |
主として感情表出のあり方が検討された。韓国では母子ともに非常に抑制的な表出スタイルが一般的であるのに対して,在日の人々にはそのような傾向は見受けられなかった。特に韓国の子どもたちは否定感情の表出に関しては制御しておらず、母子相互作用の過程で肯定感情がよく表出される日本の子どもに比較して,母親に対する依存がより強いことが荘厳(1996,in preparation)によって指摘されているが、在日の子どもにはそのような傾向は認められなかった。ただし,被検者の絶対数が少なく,これをすぐに一般化できるかどうかについては疑問が残る。一方,母子相互作用の空間関係に関しては,在日の人たちも母子間の距離が狭く,母国同様,非常にbiologicalなきずなの強調が認められた。 これを要約すると,表情のような内容に関しては帰属する文化依存,空間距離のような内容に関しては元来に帰属していた文化支配という一般傾向を指摘することができよう。これは欧米に住んで帰国直後の人が,会話の最中にそのしぐさやその表現において知らず知らずの内に模倣をしてしまっているが,時間が経過するともとの日本人のパターンに戻ってしまうという現象と同じであり,行動内容には文化独立のものと,比較的文化に影響されやすいもの,極めて短時間で帰属する文化に影響されるものの3種類があり,今後の子どもの発達の比較文化研究でこの辺の部分が検討される必要があることを示唆している。なお,会話のパターンに関しては購入した機械の調整中であり,現時点での分析はおこなわれていない。
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