1.本年は3カ年計画の初年度に当たるため、従来から農村部を後背地としてもちながら、自動車、電機、繊維等の諸産業が発達し、近年先端産業を始めとする多くの企業が進出している群馬県の東毛地域と隣接する栃木県の両毛地域のいくつかの行政機関を対象として、来年度の本調査のための予備調査を行った。具体的には、群馬県庁、群馬県太田市・館林市・大泉町と栃木県庁・栃木県足利市から当該自治体の地域開発政策の流れと人口・産業・教育・福祉等の特質や課題について聞き取り調査を行った。 2.その結果、群馬県の東毛地域と栃木県の両毛地域は自動車・電機・コンピュータ関係の大企業の立地により通勤圏が拡大し、通学圏・購買圏などの生活圏が県境を越えて広がっていることがわかった。それに伴って、行政の側でも両地域を含めた広域行政のための各種機関を形成するようになり、公共施設の共通利用のシステムも構築されてきている。広域的な連携は各自治体の議員間、商工会議所間にも及んでいる。 3.産業の高度化は住民の階級階層構成をも変化させている。新たな産業の立地のたびに新たな住民が流入してきている。そのうち、この地域に大きなインパクトを与えているのは単純労働力としての外国人労働者と大企業の専門管理職層である。例えば、前者が数多く流入することによって群馬県に全国で初めての外国人に対する医療制度が創設された。また、後者の流入はこの地域の伝統的な高校の「レベル」を急速に高め、地元の子弟が新設の公立校か県境を越えた私立高校へ通うようになっている。 4.こうして、産業の高度化によって様々な「空間」の拡大と住民の階級階層構成の変化やそれに伴う高校教育の再編が進んでいることが明らかになった。
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