1.文献資料の収集、先行研究のまとめ 本年度はまず、過去に著された集団主義に関する文献を検討し、日本人の集団志向的行動様式を再確認した。この集団志向的行動様式は、若年層においても、年長者とは「集団」の規模や特性の違いのあるものの、みられることがわかった。若年層の「集団」は、年長者層の「集団」よりもインフォーマルで、制度化、組織化されていないという点では異なるがが、集団の内と外とに働く力関係に関してははあまり相違がないようだ。ただし、こうした集団志向的行動様式の背後にある価値観については明らかにされていない。つまり、集団志向的行動様式が単なる生活の手段なのか、それ自体が目的化して価値観の具現化したものなのか、そのあたりを解明するのが重要だと考えられた。 2.大学生調査の実施 行動様式の背後にある価値観を測定するために調査を実施した。ここでは特に、集団志向的行動様式の容認度と、個々人の普遍的世界への心理的コミットメントとの関係を探ることを目的とした。調査対象者は東京近郊の大学生男女500名近くである。調査は11月に実施し、12月、1月とデータ入力をして、まだ分析途中であるが、価値観レベルで普遍志向性の弱い者ほど行動レベルでは集団志向性を容認する傾向があるようだ。 3.戦後日本の社会変化、価値観変化 戦後50年の流れを新聞記事などで辿ってみると、社会変化の中でも、日本経済の変化が人々の価値観に影響を与える大きなファクターとなっているようだ。今年度は漠然とした流れしか追っていないが、来年度は経済的指標と世論調査、意識調査にみられる変化との関連を数量的に分析していきたい。
|