研究課題/領域番号 |
06451038
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
平野 秀秋 法政大学, 社会学部, 教授 (40061105)
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研究分担者 |
田中 優子 法政大学, 第一教養部, 教授 (40139390)
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キーワード | ライプニッツ / 普遍主義と合理主義 / 自然法 / 倫理的多元論・文化的多元論 / 習俗 / 西欧的特殊性 / 理と性 |
研究概要 |
1)「自然法」概念は西欧的特殊性であるという仮説は本研究を通じて正確に証明された。 2)ストア派に淵源する「自然法」概念は、アウグスティヌスを経由して神学に流入した。トマス・アクイナスが中世に集大成した。ここに普遍的「自然法」と特殊的「習俗」という謬見の種が蒔かれた。「自然法」概念の核心は、宇宙の合理性と人智の合理性とを等身大と見なすことにある。 3)「自然法」概念は一七世紀に重要な転機を迎える。一方におけるいわゆるグローチウスらの実定法論者、他方におけるデカルト、スピノザらの自然学と倫理学の関係の探求である。だがこの時代にライプニッツという唯一の例外を除き、宇宙の理性と人性とを同視するという、他の文明に例を見ない誤解は正されなかった。 4)ライプニッツは「可能」と「偶有」の差を指摘しつつ、「自然法」概念に事実上終止符を打った。この見解から、ライプニッツは倫理的多元論、文化的多元論を主張した。重要なことは、ライプニッツによる多元論は非合理でなく合理的なことである。換言すれば「習俗」は合理的である。 5)この知見は、裏面に別記の研究論文として公表すると同時に G.W.Leibniz : Cultural Pluralism from the Pinnacle of Universal Logic として所属研究機関のドメイン上にインターネット論文形式のデータベースとして掲載し国内外の反響を受けた。 6)「研究成果報告書」は上記インターネット論文を、それに対する反響を受けて増補し提出する。また報告書の受理後はその旨を記し、かつさらに加筆して再度インターネット上に掲載することにより、ネットワークを利用した学術研究の国際的交換に資したいと希望する。 7)ライプニッツが終止符を打ったのちも、「自然法」概念はジョン・ロックと啓蒙主義を経由して西欧科学に流入・増幅され近代科学の骨格をつくった。今日近代科学の普遍性に関する反省が各方面から提出されているがその根元の所在が十分自覚されていない。上記成果報告書を基礎に平成九年度内に著書原稿を準備し刊行助成を受けたい。
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