平成6年度においては、保健福祉の推進方策としてのコミュニティ・ケアに関する文献研究、資料調査を行った。コミュニティ・ケアは、おおよそ20世紀初頭からイギリス、アメリカなどを中心として、保健福祉とその関連領域において模索されてきた。近年においては、わが国についても地域に在住する高齢者、心身障害者等の処遇の本来的なあり方からいって、ノーマライゼーション思想の影響を受けつつ、コミュニティ・ケアが重要視されるようになった。 これらの歴史的かつ国際比較的な見地から得られた知見やデータをもとに、コミュニティ・ケアが保健福祉分野で確立されるためには、またそれが単なる医療や福祉に係る経費削減にとどまらないためには、ノーマライゼーション、自由最大状況主義などの思想の摂取が必要であることを十分に理解できるようになった。 平成7年度においては、文献研究、資料調査をさらに前進させ、コミュニティ・ケアの最新の状況を把握したい。また、主として研究対象を高齢者に絞り、コミュニティ・ケアを成立、推進させる要因の把握を目的として、行政関係者、社会福祉協議会構成員、老人ホームや老人保健施設の職員等にヒアリング調査し、量的把握と合わせて質的分析を総合化して、直近のデータを得たい。さらに、コミュニティ・ケア体制において見落とされがちなプライバシー問題や援助者、利用者ともに高齢者である場合などの推進上の課題、地区設定のあり方、ケアマネジメントの具体的手法についても研究を深化させたい。
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