研究概要 |
平成6年度における文献研究,歴史的研究,資料調査などによって得られたコミュニティ・ケアに関する知見やデータを基盤として,主として研究対象を高齢者に焦点化し,コミュニティ・ケアを成立,推進させる要因の把握を目的として,行政関係者,社会福祉協議会職員,老人ホームや老人保健施設,病院等の職員にヒアリング調査し,量的把握と合わせて質的分析を総合化して,いろいろな課題が明確になってきた。 とくに高齢化の高くなっているコミュニティにおいて、過疎化が同時進行している状況もみられるので、この両者の社会構造上の相互関連性を問題とした。 また、コミュニティ・ケア体制において見落されがちなプライバシー問題や,援助者,利用者ともに高齢者である場合などの具体的な推進上の課題や,今後に取り組まれるべきコミュニティにおける保健・医療・福祉の地域ネットワークのあり方について提示した。 さらに,コミュニティ・ケアの歴史において,イギリスでの家庭重視の考え方を,一歩進めて,コミュニティに結びつけていった過程を分析した。このようなコミュニティ・ケアに関する国際比較的視点を取り入れることによって,将来の我が国の進むべき方向が,かなり明らかになってきたと思われる。 近年においては,我が国の例外ではないが,コミュニティ・ケアの前提としてのノーマライゼーション,自由最大化状況主義などの福祉思想が重視されるようになってきており,これらの考え方や理念の検討も行ったところである。 ミュニティ・ケアの方向とも合致するが,我が国が導入しようとしている公的介護保健において,地域主義,つまり市町村主義が強く打ち出されているのも当然であり,ケアマネジメントの手法も分析した。
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