本研究では、国際援助活動の規模が縮小期に入った段階での教育援助政策の動向を分析し、そのなかでの日本の援助政策に対する国際的評価の動向を分析した。UNDPのHuman Development Report 1992年版に登場した分析では、各国の社会開発分野(医療・教育・福祉など)の援助に対するコミットメントが新たな評価基準として選ばれ、この観点からみた場合、日本を含む数カ国のDAC加盟国では、社会開発分野へのコミットメントが際立って低いことが指摘された。この指摘は多分にデータ処理上疑問のある分析にもとずいているが、ここに従来型とは異なったタイプの対日批判が登場していることは見逃すべきではなかろう。この問題は先進各国が対外援助をいかなる分野に振り向けているのか、そのなかで日本は他国とはかけ離れたパターンとなっているかを検証するなかで検討されるべき問題である。そこで本研究ではDAC加盟国の2国間援助の分野別構成に着目して、クラスター分析を実施いた。その結果、日本の対外援助の場合には、経済インフラ、生産援助のシェアがDAC加盟国のなかでも際立って高く、それに対して医療・教育・福祉などUNDPが定義する「人間開発優先事項」に対する援助のシェアが少ないことは明らかである。クラスター分析の結果によると、DAC加盟国21カ国は大きく「社会開発重視型」(ベルギー、フランス、オーストラリア、アイルランド、デンマーク)と「経済開発重視型」(フィンランド、イタリア、イギリス、日本)とその中間型(ノルウェイ、スウェーデン、ドイツ、オランダ、スイス、カナダ)の3つのグループに大別されることが明らかとなった。
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