研究課題/領域番号 |
06451061
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
河内 祥輔 北海道大学, 文学部, 教授 (80013283)
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研究分担者 |
三田 武繁 北海道大学, 文学部, 助手 (50241279)
櫻井 英治 北海道大学, 文学部, 助教授 (80215681)
南部 昇 北海道大学, 文学部, 教授 (20002264)
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キーワード | 荘園制 / 流通 / 和市 / 為替 / 代銭納 / 東寺 |
研究概要 |
本研究がめざすところは、荘園制の収取・輸送システムの変容が流通経済上のいかなる変化によってもたらされ、逆にそれは流通経済構造にいかなる変容をもたらしたかを、史料の豊富な東寺領荘園を中心に考察することにあるが、本年度の研究の結果、年貢や代銭の運搬システムや為替手形の運用の実態、それらのシステムにおいて問丸や商人がはたした役割等に関し、具体的な知見をえることができた。東寺領荘園のひとつ備中国新見荘において為替手形が恒常的な年貢輸送手段として利用されるのは15世紀であるが、それらの為替手形の多くは荘園現地で振出されたものではなく、堺をはじめとする畿内諸都市を振出地としていたと推定される。つまり、為替手形を携行した商人が荘園現地に赴き、そこでその為替手形と引き換えに荘官から生産物を買いとって商品化する。荘官はその為替手形を年貢代として京都の東寺に送り、東寺は京都や堺などの畿内諸都市においてそれを換金して必要物資を購入する。おおむね以上のような構図が想定されるのであるが、ここでは荘園領主はもはや自己の荘園で生産されたものを手にすることはなく、荘園制的な収取システムは“計算"のうえでのみ維持されているにすぎない。荘園制におけるこの究極的な形態はまさに商人社会における信用経済の発達に規定されて現出したものといえるが、同様の問題は鎌倉時代後期の代銭納の確立期についても考察される必要がある。また、室町時代には請負代官の任命に際して京都の商人が保証人にたつ慣行が制度的に確立してくる事実や、山伏や聖が荘園経営のエキスパートとして代官や上使として現地に派遣されるケースが増えてくる事実なども確認されるが、これらの事実のもつ意義も流通経済との関わりにおいて説明しうるのではないかと予測している。
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