研究課題/領域番号 |
06451061
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
河内 祥輔 北海道大学, 文学部, 教授 (80013283)
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研究分担者 |
三田 武繁 北海道大学, 文学部, 助手 (50241279)
櫻井 英治 北海道大学, 文学部, 助教授 (80215681)
南部 昇 北海道大学, 文学部, 教授 (20002264)
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キーワード | 中世経済史 / 荘園 / 流通 / 代銭納 / 割符 / 代官請負 / 段銭 |
研究概要 |
本研究がめざすところは、荘園制の収取・輸送システムの変容が流通経済上のいかなる変化によってもたらされ、逆にそれは流通経済構造にいかなる変容をもたらしたかを解明することを通じて、かつて家産制的自給経済とみなされていた荘園制の評価、ひいては封建社会と目される中世社会の全体像に修正を迫るとともに、荘園経済と流通経済の双方を視野に組み入れた、新たな中世経済構造に関する理論を構築することにあったが、最終年度にあたる本年度は、前年度にひきつづいて具体的な史料分析を継続するとともに、研究成果報告書の作成に向けてこれまでにえた知見を整理・総括することに活動の主眼を移し、その結果、以下の3編の論文からなる研究成果報告書を完成させることができた。まず桜井英治の「中世中後期における荘園制的収取システムと流通経済-年貢送進手段を中心に-」は、13世紀後半に採用された代銭納のメカニズムとの背後にある貨幣観念の変化、14世紀に銭に代わる年貢送進手段として採用された割符のメカニズムと信用の問題、15世紀を中心に展開した代官職請人制度の実態と意義を検討している。三田武繁の「室町時代の荘園領主経済に関する-考察-自邸修造要脚段銭をめぐって-」は、東寺領・九条家領・近衛家領の各荘園を素材に室町時代における本所段銭について検討し、その収取の実態と守護領国支配機構への依存構造を明らかにしている。河内祥輔の「荘園制形成政策の始動」は、口分田と墾田、民要地と空閑地という各概念の検討を通じて、古代班田収授制度が本質的に有していた貴族的大土地所有への方向性を指摘し、中世荘園・公領制成立の意義を8世紀以来の長期にわたる運動の結実として評価している。以上のように、本研究はきわめて充実した成果をあげることができ、中世前期についてやや手薄になったうらみはあるものの、当初の目標はほぼ達成されたと判断している。
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