研究概要 |
本年度の研究の成果は,以下の如くである。 1,岡山大学図書館,岡山市立図書館,岡山県立図書館で史料調査を行い,地方史料を撮影により収集した。 2,前年度に引き続き,岡山藩政成立過程の検討から,池田氏・宇喜多氏・小早川氏の関連文書を収集し,合わせてその史料目録を作成した(報告書掲載)。 3,また,江戸・上方(京・大阪)の各拠点の相互関係や国元との関連を分析し,藩の意思決定のあり様を多極的・動態的に捉え,藩政の構造の解析を行った。具体的には,(1),キリシタン,不受不施派に対する藩と幕府の禁圧政策の分析を通しての幕藩関係の考察,(2),朝鮮通信使通行の応接準備等の対応を通して,岡山藩と他藩,幕府との関係,また,これに伴う領内民衆の異国認識の考察,(3),名君論を素材として公儀(上位国家)に対して大名権力(藩)を下位国家-藩屏国家とする自意識の形成の解明,(4),大阪における岡山藩と他藩,幕府,および鴻池家をはじめとする大坂商業資本との関係の検討を通しての藩政上における大坂の位置の考察,(5),池田綱政の少将昇進運動から当時の岡山藩の,家格と同族藩(鳥取藩)への意識の考察,(6),禁裏普請御用の史料を素材に藩の朝廷意識と京都留守居の役割の検討,などである。 1994・95年度の2年間の研究で,岡山藩と幕府・朝廷・他藩などの集団との関係を相互に形成される意識を重視して解明することが,藩の機構がどのように機能していくかというように,藩を動態的に検討していく上で極めて有効であることが明らかとなった。今後の課題としては,これらの成果に基づき,さらに農民や町人,職人,寺社および信仰集団など,領内の諸集団との関係をも取り上げ,意識の問題を軸にして藩のあり様を考察したい。
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