研究課題/領域番号 |
06451065
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 喜博 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (40250857)
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研究分担者 |
柳橋 博之 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 助教授 (70220192)
黒田 卓 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 助教授 (70195593)
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キーワード | イスラム / 民族 / 原理主義 / アラブ / イラン / ハンバル派 / シャリーア |
研究概要 |
本研究は、中東イスラムの政治・社会との関連においてイスラムの復興を理解しようとする試みであった。その結果次のような認識が得られた。イスラムの復興をイスラムの内部から捉えるときに最初に問題になるのはイスラム原理主義と一般に称される思潮である。そのような思潮は、ハンバル派に見られるように伝統的に中東イスラム社会においてくり返し現れ、コーランやスンナといった啓示への回帰とその厳正な解釈を唱えるものであった。しかしその主張が社会的に大きな力を持つためには、他の要素が不可欠であった。たとえば今世紀初頭のイランにおけるように、外国の軍事的経済的脅威が直接に感じられる時には、民族主義のようにこの脅威と直接対決しようとする思潮が優勢になるのであって、イスラムは一歩退いた形になっている。アラブ社会でも同様であって、前世紀末より、西欧の政治的経済的支配の下にあった時期には、西欧の諸制度の導入が、西欧からの独立のためには不可欠であった。こうして民主主義や民族主義や社会主義といった潮流は、一時はアラブ世界を席巻するかのように見えたが、これらの潮流自体がアラブ世界においては、家父長制システムに根ざす権威主義的で閉じた利益集団を形成することにより、一方では民衆を政治的に抑圧し、他方では民衆が自らのアイデンティティーを見出す場とはなり得なかった。こうして民主主義や民族主義や社会主義にもとづく制度がその本来の機能を果たさず、これらの形骸化した近代的政治・社会制度の間隙をぬって大多数の大衆のアイデンティティーを求める場としてイスラムが復興してきたと見るべきである。このようにイスラムという思潮が中東イスラム諸国においてはつねに伏在するが、それが復興運動という形で表面化するには他の要素が必要であるということが本研究で得られた共通の知見であると言うことができる。
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