本年度は、平成6.7年度の調査結果をもとに、縄文時代の石材獲得システムとの比較によって旧石器時代の石材獲得システムの検討を行い、次のような結論を得るに至った。 1、新潟県北部の旧石器時代の主要石材は硬質頁岩・黒曜石・玉髄であるが、そのほとんどが遺跡から20km以上も離れた遠隔地のものであった。このような遺跡を遠隔地型と呼ぶ。 2、縄文時代の主要石材は旧石器時代よりも明らかに種類が多く、また遺跡から10km以内の近隣地からの石材で構成される。このような遺跡を近隣地型と呼ぶ。ただし、時代あるいは石材環境によって遠隔地型に近い遺跡が若干存在する。 3、縄文時代の近隣地型は周辺地域の石材環境を素直に利用した結果であるが、これには定住化の度合が高い、石器消費量が大きい、石器の大きさ・形が多様性に富む、二次加工技術が発達しているということが関与している。また、縄文時代で遠隔地の石材を比較的多く用いている遺跡が若干みられるが、これは定住化の度合いが若干低い、もしくは交換網が発達していることによる。 4、3の成果と比較すると、旧石器時代では3であげた諸要素の逆のことが関与しているとみられる。すなわち、移動的である、消費量が小さい、二次加工技術に重きをおいていない、交換網が広いということである。そして、旧石器時代のなかでこれら諸要素のゆらぎによって、システムが変化したと考えられる。特に中期旧石器時代から後期旧石器時代への過渡期、ポイント・細石刃の時期が注目され、そして縄文時代への移行期の変動が最も著しい。
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