研究概要 |
1.発掘調査報告書等の文献調査により、遺跡出土の赤色顔料、赤色漆製品、赤色塗彩土器等の遺物の把握に努め、ベンガラ使用製品である可能性を検討した。 2.各地域における発掘調査関係者との意見交換に努め、潜在的あるいは未報告の赤色顔料関係資料を捕捉するとともに、ベンガラ粒子の形態把握の重要性を強調し、関係資料の顕在化をはかった。 3.1,2により検出された赤色関係資料のうちで、分析調査可能な資料について赤色顔料の分析を実施し、ベンガラ使用の認められた資料については、顕微鏡観察によりベンガラ粒子の形態を確認した。 4.以上の調査の結果と各地域における研究者の分析例の増加とから、パイプ状ベンガラ粒子は、例えば鹿児島県下では少なくとも縄文時代の早期の段階から使用されていることが判明しており、今まで以上に古い段階からの流通を考えることができる可能性が開けてきた。 5.一方、自然露頭のベンガラについても、その地域の捕捉に努め、資料入手の可能なものについては、ベンガラ粒子の形態調査を実施した。しかし、残念ながら、今の所パイプ状を呈するベンガラの露頭は1ヵ所も確認できておらず、当初に予測したごとく産出地域が限定される可能性が一段と高まっている。 6.今後は、更に出土資料としての類例の増大に努め、地域や時代を加味してその分布をより明確なものにするとともに、自然露頭の探索にも努力し、当研究の目的である広域的交流の実態にせまりたい。
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