研究概要 |
本研究の目的は、言語によるコミュニケーションの基本単位である文(従属節である場合も含む)の機能と構造についての一般的な理論を構築し、言語によるコミュニケーションのメカニズムを総合的に検討することである。この目的のために本年度は二つの作業を行った。一つは、コミュニケーションの場における文の基本的意味機能と統語構造の関係についての一般理論構築の基礎固めをすることであった。本研究者が本年度までに英語の法助動詞、法副詞、接続詞に関して行った研究で得られた結論は、文の発話の意味は、1)発話の力(文が遂行する発話行為の意味効果)、2)命題態度(命題に対する話者の心的態度)、3)命題的法性(命題態度を反映する命題の様相)、4)命題(文が表す出来事または状態)、の四つの部分からなるということである。このように分析される文の発話の意味が統語構造にどのように反映されるかは、ある話者の文の発話を別の話者が報告する文脈でかなりの部分明らかになる。そこで、本研究が今年度行った第二の作業は、このような文脈を英語の文の発話資料の中に見つけだし、その状況を調査することであった。現実には、このような文脈とは発話行為動詞(speech act verb)とbilieve,wantのような命題態度動詞が従属節を従えている構文であるが、今年度の研究では、このような構文をコンピュータで利用可能な何種かのコーパスの中で調査した。従来の文(節)の研究は、そのコミュニケーションにおける機能、意味構造、統語構造をそれぞれ別個に扱ってきたが、本研究はこれらを総合的に扱うことによって従来の研究にない新しい知見を得つつあると感じている。研究の成果を一層堅固なものにするためには、さらに多量の言語資料によって実証する必要があるため、現在コンピュータを利用した本研究独自の資料収集を計画し、それを実行し始めている。
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