研究課題
1 各研究分担者は、分担する研究テーマに関する文献・資料等について目録を作成した。2 また各自の研究成果を毎月1回開かれた研究会で逐次発表し、それを基に活発な意見交換を行った。さらに来日中の海外の政治学者による講演会も開かれ、比較政治学の視点から有意義な示唆を得ることができた。3 以上の作業を通じて、1980年以降の日本政治について次のような成果が得られた。(1) 理論的には、新制度論、ポリシ-ネットワーク論を精緻化する作業が進められた。(2) まず全般的に、従来の日本における政策体系と異なる点として、財界や外国政府などの政策過程への参入、市場からの自由化と国際化への圧力と遅れ気味の政府・与党の対応、各政治主体間の政策の収束と国家の保有する政策ルーツの縮小化、「連合」成立に見られる労使協調路線への収斂と制度政策要求への方針転換などの諸点が明らかとなった。(3) 産業政策の制度論的分析からは、1980年代のいわゆる自由主義的潮流が、実は1970年代には強まりつつあった「市場の脱〈公的領域〉化の延長上にあり、通説の主張するような英米に類似した新保守主義論とは異なる日本の政治経済像が提示された。(4) 日米貿易摩擦の実証的分析からは、業界の政治力、改革ネットワーク、米議会、政治介入、直接投資、政策組織などに影響を受ける通商交渉の構造が析出されるとともに、こうした構造が1990年代に入ると外圧認識の弱化、政治決断の条件が喪失するなど、変容を迫られていることが解明された。4 今後は、こうした政策変容が、1990年代の政治改革の中でどのように発展したかの検討を課題としたい。
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