研究概要 |
1.(1)「近代化」に関する一般理論を再検討するために、この領域において主要なスタンダード文献と目されている次の基本的文献を熟読した。W.W.Rostow,The Stages of Economic Growth(1960);David E.Apter,The Politics of Modernization(1965);C.E.Black,The Dynamics of Modernization(1966).(2)また、共産主義理論が「近代化」や「発展」をどのように見ているかを考察するために、John H.Kautsky,Communism and the Politics od Development(1968),(3)さらに、日本とトルコの近代化への異同点を比較したBlack,The Modernization of Japan and Russia(1975)を再読した。(4)次に、ゴルバチョフ後のソ連の発展について論じたR.Dahrendorf,Reflection on the Revolutin in Europe,そして、(5)エリツィン後のロシアの発展について論じたM.Malia,“From Under the Rubbles,what?"Problems of Communism(Jan.1992)を読み、次のごときtentativeな知見を得た。 当研究遂行中に、欧米諸国と日本との間には、対旧ソ連/ロシア認識に大きな差異が存在することが明らかとなった。その差異が発生する理由は、「近代化」や「発展」にかんし、根本的な前提の差異が存在するからである。つまり、従来欧米諸国は、ヨーロッパで発達してきた「近代化」や「発展」が全ての国が追求すべき普遍的なモデルであるとの暗黙の前提に立っていた。したがって、ゴルバチョフあるいはエリツィン登場後のロシアも、そのような発展モデルを志向し、現在困難な、移行の最中にある。しかし、他方、日本人の多くは、日本の「近代化」や「発展」の経験からも、ロシアなどの非欧米諸国が欧米型発展モデルを忠実にフォローし履行することが非常に難しい、と考える。つまり、ロシアや中国は、たとえ欧米流の民主主義や市場経済を目指そうとする意志があっても、夫々の国の伝統、文化、その他の要因の多大の影響を受けて、結局ロシアないし中国型の発展しか遂げえないと考える。
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