(1)台湾の経済を日本と中国と比較するに当たり、如何なる問題意識をもち、また如何なる方法論的枠組みを用いるかは、この研究計画の成否を決定づける。その点で、本研究計画は台湾経済が日本と中国との中間的媒介項として位置づけ、この枠組みの中で台湾経済を位置づけかつ発展のメカニズムを明らかにした。つまり、台湾は対日輸入・対中輸出の国際枠組みの中で発展のメカニズムを持続し、「台湾企業からみた日台関係」(冊子、第1章に収録)の実態と性格を明白にしたのである。 (2)台湾のこうした地位と発展のメカニズムは、同じくNIESの韓国との比較を通じて一層客観化する。韓国との同時比較を通じて、台湾を日本と中国の構造的把握は本研究が得たもうひとつの成果といっていい。「東アジアの経済発展とビジネス文化」(「冊子」第2章に収録)はこの点を活かした研究成果である。 台湾経済を国際比較するに当たり、基本概念として「国民経済」の基礎条件が問われるし、その段階的推移が関心事となる。この点はとりわけ中国(大陸)との比較において鋭く表れる。自己通貨の発行権と自主関税制度、この二つの確立が基礎条件と考えるが、「在国際経済演変中的台湾経貿関係」(「冊子」第3章に収録)は、この点を問題意識の底流に据き、台湾経済の戦後過程をユニークな視点から把握したのである。 (4)一方、統計の収集と整備は本件研究のいまひとつの「成果」とみたい。「台湾統計編」(「冊子」第2部に収録)は、同類の統計数値が入手し難い現状では貴重な資料であると考える。研究代表者が籍をおく名古屋大学国際経済動態研究センターに台湾をはじめ韓国、中国の経済統計資料がそれなりに整備されたことも本研究計画がその触発の起点をなしたといえる。この点も研究の「成果」と評価したい。
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