今回の研究目的は次の2点である。1)移転価格を多国籍企業が実際にどのように設定しているか。2)その設定価格に対して税務当局が如何に対抗するか。これらを中心に、実地調査と文献調査を企てた。 企業は部門制を布いているときには、部門同士で財及びサービスを移転する場合に、移転価格を設定して企業全体の利潤を最大化する傾向がある。このことは経済分析からも当然とされるが、現実世界で個別企業がどのように移転価格を設定しているかについては、実地調査がほとんどなされていない。そこで多国籍企業の本社が子会社へ移転価格を設定するときにいかなるファクターを重視するか、また子会社が独自に移転価格を設定するとしたらいかなるファクターによるのかということを現実に調査した。 移転価格に対してアメリカではこの2、3年税務調査を特に外国企業の在米子会社に対して厳しくしており、国際的問題にまで発展している。同国では移転価格税制を毎年のように改訂して、昨年7月に最終法を設定した。わが国の多国籍企業もその子会社の多くが税務査察を受けており、税額の更正決定を受けた企業が少なからずある。 そこでアームズレングス価格接近には国際的に認められている算定法のうちどれが妥当であるかについて実地調査を行った。次いで、米国の移転価格税制に対する日本企業の対応と事前確認制度についても実地に調査した。 実地調査はアンケートとインタビューの二本立てで行ったが、昨年10月下旬に科学研究費の交付が決まり、研究期間が十分なかったために、詳しい分析については次年度に行う予定である。
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