1.農産物市場の開放と「円高」の定着は、食品工業の原料調達構造に大きな影響を与えてきている。とくに、「円高」の定着は顔料農畜産物および加工食品の内外価格差を大きく拡大し、製品輸入や食品工業の海外進出に拍車をかけている。また、農業労働力の脆弱化に典型的に象徴される農業生産構造の脆弱化の進行は、国内原料供給・調達基盤を不安定にし、輸入依存態勢への傾斜をますます強める要因となっている。われわれは、こうした事態に対応して、食品工業の原料調達構造の今日的特徴を把握し、食品工業と原料向け農業生産構造の今後の展開の方向性を考察することが急務であると考え、本年度は概して小零細企業により構成され、地域的原料調達構造を持つ漬物加工業を取り上げた。 2.漬物加工業や漬物原料向け野菜生産および漬物原料向け野菜輸入に関する既存資料・文献を収集し、その分析を行うとともに、山形県、石川県、北海道を対象に漬物加工業者調査、関連機関調査、経済連・農協・農家調査を実施した。 3.本年度の調査研究で得られた知見は、(1)漬物市場が贈答用などの高級品市場と一般の廉価品市場に急速に別れつつあること、(2)廉価品市場では大型量販店の力がますます強くなり、大型量販店主導の市場再編が進行してきていること、(3)そうした中で漬物加工業の分化・分解が急速に進行していること、(4)漬物向け原料生産構造が担い手不足・高齢化等により急速に脆弱化の方向を辿っており、加工業者の原料調達圏域が広域化の方向を辿っていること、そして(5)原料調達難から中小零細企業でも輸入原料に依存することが出てきており、今後それはますます増加する可能性の高いこと、等である。
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