本年度は、主として北海道内の、特に中小乳業乳業を対象に、原料調達・製品販売構造を検討した。 原料調達面では大きな変化は見られなかったが、製品販売面では大きな構造変動が進行しつつあった。即ち、これまで北海道乳業が基盤としてきた特定乳製品市場で、輸入品との競合が激化し、結果として飲用乳市場へと傾斜してきているのである。北海道の市乳化率は大幅に上昇するとともに、都府県移出が大きく拡大し、都府県飲用乳市場での競争は、大手量販店主導の流通再編と相俟って、特段に激化してきている。 こうした中で、特に中小乳業はPBブランド生産へ傾斜し、何とか経営の再生産を保持し続けようとしているが、彼我の価格交渉力の隔絶的な差から、中小乳業の出荷価格は低下を余儀なくされている。また、アイスクリームやチーズ等の高次加工品生産に手掛けてきているが、販売ルートが確立しない等の諸困難を抱え、ここでも予期した販売価格を維持できなっくなっている。販売価格の低下が、現在のところ、原料乳価格の低下にまで至っていないが、乳業経営内的引き下げ圧力は相当高まっていることが想定される。また、市乳への傾斜が深刻な「余乳問題」(基本的に市乳価格で原料乳を調達するが余乳は加工原料乳価格で転売できるのがせいぜいのところである)を発現させ、原料乳価格引き下げの圧力を一層加速させてきている。現在の状況が長期化すれば、乳価の引き下げ圧力は今後ますます強まると見なければならない。乳価引き下げが、酪農生産構造を一層脆弱化させ、ひいては、将来的に原料調達問題を深刻化していく危険性は、充分高いと言わなければならない。
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