食品工業の原材費率が一般に、極めて高率なことは周知である。原料費率をいかに低下させえるか。ここに、国際的かつ熾烈な競争に打ち勝ち、食品工業の今後の展望を切り開いていけるか否かの鍵があると言っても過言ではない。 市場開放が、食品工業の今後の展開に大きな影響を与えることは言うまでもない。食品工業、特に大企業はこの間、より安価な原料を求めて輸入依存へ加速度的に傾斜し、資本輸出・技術供与などを通じていわゆる「開発輸入」に積極的に手を染めてきた。また、国内原料価格の引き下げを執拗に追求してきた。 我々が本研究で特に問題にしたのは、大企業を中心とした如上の態勢がますます強まる中で、地域内原料と地域的市場に依拠し、独自な発展を遂げてきた膨大な数に登る中小零細企業の原料調達の方向性如何である。それが、食品工業総体の今後の原料調達方向を決定づけ、国内原料生産農業との関連性を決定づけていくと考えたからである。 対象として取り上げた中小零細酒造業・漬物製造業・乳業は、農産物・食料市場の対外開放が一層進み市場競争がますます激化する中で、製品販売・原料確保面で様々な困難に直面してきている。特に、原料確保面では漬物製造業で典型的に見られたように、農業生産構造の脆弱化の中で、輸入原料に依存せざるをえない構造が徐々にではあれ醸成されてきているのである。酒造業・乳業では、まだそこまで行っていないとは言え、農業生産構造の脆弱化は止めどなく進行しており、WTO=自由貿易体制が反転でもしない限り、漬物製造業の原料調達の姿は明日の酒造業・乳業、広くは中小零細食品工業、食品工業全般の姿と考えざるをえない。そして、それは、既に大企業を中心に一般化している、国内農業生産基盤から全く遊離した食品工業の全面的完成を意味しよう。
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