障害児の体育における健常児クラスのインクルージョンに関する諸問題を検討するため、5名の知的障害児を対象に縦断的研究を行なった。5名はそれぞれ異なった協力学級へでかけて体育野授業を受ける方式をとった。本研究ではインクルージョンの成果を、クラスにおいて健常児が障害児をどのように受け入れ、どのような困難に直面したかの適応の様子を調べることと、体育の従業時における障害児ならびに健常児の身体活動量(ペドメーターによる測定)がどの水準にあるのかを、運動種目別に比較することによって明らかにすることを目的とする。 ペドメーター測定の結果、障害児は健常児に較べてどの運動種目においても低い値を示した。両群の間の差がより大きく現われた運動種目は、ドッジボールやポートボール、サッカーなどのボール運動であった。障害児のボールをあつかうスキルの未熟さとチームの中でどのように協力的に動くべきかをうまくつかめなかったことがこのような差を生んだといえる。ただし、動きが少なかったとはいえボール運動に対する障害児の興味は必ずしも低いものではなかった。 両群の差が比較的少ない運動種目は創作ダンスであった。表現ダンスにおいては、作品についての話し合いの時間が設けられている関係上運動量は両群ともペドメーター値はあまり高くならなかった。このダンス活動はグループにおける障害児の役割を能力に応じて設定しやすい面があるため障害児は意欲的に取り組むことができた。 障害児と健常児の交流のなじみぐあいに関しては体育を担当した健常児学級の教師が評価を行なった。両群間のトラブルは最初の三か月は頻繁に生じたが、以後次第に減り、最後の三か月は大きく減少した。体験を重ねるにつれて両者の関係は次第に好ましいものへと変化していくことが明らかとなった。
|