研究概要 |
水産業では,1980年代後半から1990年代前半にかけて,さほど大きな技術革新は見られなかった。しかし,近海の旋網漁業では,単船操業を基本とする漁法の近代化が1997年以降,急速に進行する可能性がある。これは,1980年代以前からの漁船員高齢化に伴う人員不足,1990年代以降の対象資源の減少による経営不振,1997年から導入される「海区別漁種別漁獲許容量」制度(TAC)が,その技術革新の要因となると予想される。 技術革新に伴う産業構造の転換は地場産業にも波及した。結城紬産地では図案設計にCADが導入され,産地問屋のデザイン機能が強化された。また民間研究所の活発な新規立地は,技術革新を加速しようとする産業界の意志の表れである。技術革新と地域変容の関係は,明治大正期における蚕種業の研究においても確認され,技術革新が工業地域構造を変容させる営力となることが,近代化以降の日本において一般的であることが明らかになった。 商業空間は,消費者の自家用車利用によって大きく変容しつつある。まず,消費者行動圏と消費者の情報受容圏は広域化し,複雑化している。大都市よりも小都市において,モータリーゼーションは消費者行動を変容させている。モータリーゼーションに十分対応できない地方都市の旧市街地では,空店舗率が高まり,一方,ロードサイドショップは依然として発展しつつあり,商業空間の空洞化が進んでいる。 下田市に見られるように,観光化に伴って,外来者の流入の多いマチバ(町場)と地元民の居住が多数を占めるリョ-バ(漁場)の商業景観を比較すると,前者の方が開放的・機能的,そして新奇的である。景観の画一化は進行しているが,その状況下でその土地のアイデンティティの追求もなされている。 近年,サービス業化の進展は著しい。東京大都市圏を例にとると,マクロ的には,商業機能は平準化しつつある。一方,金融・証券業をはじめ情報処理・情報提供サービス・企業支援サービス部門などの高度サービス業は,東京への集中を強めている。
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